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空力音の発生機構の解明と制御に関する研究

1.翼の後縁ノイズの発生機構の解明と制御

 レイノルズ数が106程度の低迎角翼からは,トレーリングエッジノイズと呼ばれる強い線スペクトル音が発生します.この音は,境界層不安定と音響フィードバックにより説明されます.
 ここでは,トレーリングエッジノイズの発生機構の解明と流れの安定化による音の抑制制御について実験的に調べています.可視化写真では翼の後縁近傍で音の放射と同期した渦生成が明確に捉えられています.翼面境界層中にプラズマアクチュエータで主流速度の4%程度の壁面流れを誘起すると,翼面境界層の不安定特性は顕著(増幅率が1/3程度)に安定側へとシフトし,後縁での渦生成は生じなくなり,音の放射はほぼ完全に抑制されます.

 

左から,翼後縁の可視化,非制御時(PA off)・制御時(PA on)の瞬時速度場

 

2.角柱から生じる放射音に関する研究

 鈍体後流中には,広いレイノルズ数範囲で,規則的なカルマン渦列が生じ,周期的な空力音(エオリス音)を放射します.ここでは,柱状物体の断面形状が放射空力音に及ぼす影響について圧縮性ナビエ・ストークス方程式による数値実験により調べています.断面アスペクト比が1の正方形角柱から生じる音の性質は,円柱の場合と同様,渦列の放出周波数fkと一致する揚力ダイポール音に支配されますが,縦に細長い低アスペクト比の角柱後流では,渦生成が角柱ごく近傍から生じるようになり,周波数2fkの抗力ダイポール音も顕在化します.

アスペクト比0.4の角柱から生じる空力音.左から,音響場,揚力ダイポール音,抗力ダイポール音