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流れの不安定性と境界層遷移に関する研究

実機レイノルズ数における後退翼上境界層遷移に関する研究

 境界層の不安定性を抑え遷移を遅延する層流翼設計は,乱流摩擦抵抗の低減化とともに,次世代航空機の摩擦抵抗低減には欠かせません.後退角を有する翼では,特に前縁(付着線)近くの領域において,圧力勾配と外部流線の向きの不一致から生じる横流れ速度成分により境界層速度分布は捻れ,境界層遷移の始まりは非粘性型の横流れ不安定に支配されます.
 遷移の予測には,eN 法に代表される線形安定性解析が広く用いられます.遷移点を与えるN 値として8~12 が一般に用いられますが,境界層遷移は初期撹乱の強さに支配されるため,経験に基づくN 値は風洞毎に異なります.加えて,スケールモデルを用いる場合,同じ翼弦位置での境界層厚さは実機よりも著しく小さくなります.従って,風洞実験においては,レイノルズ数の増加とともに模型表面のわずかな凹凸でもラフネスとして機能し,境界層遷移が促進される可能性があります.
 本研究では,横流れ不安定性を軽減した層流後退翼のスケールモデルを採用し,境界層遷移のレイノルズ数依存性を実機レイノルズ数(~107)までの範囲で調べています.

 
(左)後退翼模型(JAXA-TWT1)と(右)TSPによる後退翼境界層の可視化(Re=107)気流は左から右.
乱流くさびの拡がりによって乱流遷移する様子が捉えられている.